寝子
やまうちあつし
これは本当の猫じゃない
昼間は猫のふりをしているが
真夜中、家人が寝静まる頃
ぼんやりと白く光って
人のかたちをしたものに
そして私の布団に
勝手にもぐりこんでくる
私はそれをだきしめる
舌は猫らしくざらざらしている
何事か耳元でささやいてくるが
それどころではないので覚えていない
私の頬は熱く湿っている
私はきつくだきしめる
翌朝目を覚ますと
猫は部屋の片隅で丸まって眠っている
これは本当の猫じゃない
家人にそう伝えたい気持ちを抑えて
いそいそと会社へ向かう
自由詩
寝子
Copyright
やまうちあつし
2015-05-12 16:25:44
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