そんなこと
花咲風太郎
蝋燭の灯りが消えてゆくように
真っ暗闇になるのだと
そんなふうに
誰に教わったわけでもないが
そんなふうに
思い込んでいたもので
真っ暗闇に包まれて
何も見えなくなることは
なんとなく
知っているつもりで
そんなときの
怖がりかたは承知とばかり
おかしな余裕を持っていたもので
いやそうではない
ほんとうのその時は
眩しい光りに包まれて
何も見えなくなるのだと
そんなふうに
唐突に思いついたものだから
すっかり落ち着きを失くしてしまい
さていったいどういう心持ちなのだろうと
やや狼狽しながら
ゆめにうつつに
そんなことを考えている
いよいよ近ごろは
そんなことばかり考えている