ゼリー色の夏
ことこ

おしみなく愛をそそいで枯れさせてあたりいちめんプールの匂い


この先でアラームが鳴っていなくても立ち止まらないでください、と声


あかあかと尾びれ背びれが生えていき あとからあとから水にゆれてる


扇風機かかえて帰省するひとと家族をつれて帰省するひと


(はなび)また(はなび)花火のおとがしてあなたのやさしさとすれ違う


いっせいに暗がりになり駆け抜ける野外音楽堂のうちがわ


台風のはなれていった夕暮れにスイカ切ります近づかないで


さきざきでぶつかりあって散る星がなにもいわずに瞬いていた


朝顔の種をひそかにあつめてくしらないひとの家の軒先


ぼんやりと気泡が昇り(息をして)うすいしお味のゼリーを食べる


短歌 ゼリー色の夏 Copyright ことこ 2015-05-09 15:48:12
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