枯れ枝。
梓ゆい

ドライアイスの冷たさが

置いた手の感覚を奪ってゆく。

触れていれば・暖めていれば

父は目を覚ますと考えた。

指先の感覚が無くなった手を離してタオルで包み

霜で覆われた父の手を再び握る。

微笑んだように結ばれた口が開いて欲しいと

父の顔をじっと見つめる。

目元がくぼんで

肌が土気色になった三日目の晩

羽織袴から覗く両腕両足は

とうとう枯れ枝になった。



自由詩 枯れ枝。 Copyright 梓ゆい 2015-05-04 16:57:42
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