願う
文字綴り屋 ひじり

いつの間にか
君と僕は
違う道を歩いてた
あの時じゃなくても
たぶん
いずれは訪れる時だった
だから君を憎んではいないよ
ただわかっていても
寂しくなっただけだよ

離れていく後姿を
僕は見送ることもしなかった
君も同じように
見送ることもしなかっただろう
2人とも振り返ることなく
真っ直ぐに歩いて行った

それでもまだ僕は
鎖に繋がれている気分だった
君の面影
君との思い出
時間に押しつぶされていく中で
不意に浮かび上がる君
抜け出したくて
がむしゃらに走った僕

でも気が付いたよ
疲れた顔で鏡を見れば
心配そうに僕の顔を覗き込み
僕を慰めてくれた君が
見えるんだ

僕が引き摺っていた鎖は
僕が自分独りで大事に
抱え込んでいた幻だった
少しも重くもないのに
何の痛みも与えないのに
僕が作り出した幻想
それが答えだった
でもその答えを認めたくなかった
だからこそ
僕は自分独りで大事に
幻を抱え込んでいた

君も同じ幻想を抱えているの?
辛くないかい?
ちゃんと笑えているかい?
もう僕は君の隣にはいないけど
君があの時と同じ瞳をしているならば
悲しいと思うよ
僕は君の笑顔が好きだった
だから君が今
いつものように笑えるように


自由詩 願う Copyright 文字綴り屋 ひじり 2015-05-03 19:05:57
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