愉快な午後
ただのみきや

山を駆け下り開けた浅瀬に出ると
ゆるゆると草を揺らしながら往く
水の膨らみは千変万化を繰り返し
陽射しに微笑みを返すのだ

小学生の女の子ばかり六人
紫外線から完全に身を守った女の先生と一緒に
水路の縁に立つ
手には小さなバケツとおたま
足には長靴
「あまり奥まで行くとずぶずぶになるから
気を付けてね」
先生はさらりと注意してしゃがみ込む
子供たちは囀りながら水路に入り
おたまでしきりに何かを掬っている

これは狙ったのか
それとも偶然か
おたまで オタマジャクシとは
面白すぎるじゃないか
観客(人間の)が
わたし一人なんて
モッタイナイじゃないか
「おたまで掬うのは誰のアイデアですか? 」
そう聞いたなら
あの先生 戸惑いながらもすまし顔で
「いいえ たまたまです」
なんて言いそうで仕方ないから

ああ愉快な午後だ
うららかな陽射しを躍らせながら
わたしもゆるゆる流れて往こう
静かに
奔放に
すり抜ける
いのちと重なりながら



           《愉快な午後:2015年4月28日》







自由詩 愉快な午後 Copyright ただのみきや 2015-05-02 05:50:03
notebook Home 戻る