さくらがい
常磐瀬良
いつからだろうか
シフォンのりぼんを結ばなくなったのは
蜜を孕んだくちびるに
群がる阿呆鳥のざわめき
何もかもが繊細でやわらかい色彩で出来ていた
荒れ狂う波の喧騒
いっときの美しさしか見えない人たち
ちいさな桜貝は踏まれて押されて流されて
ぱり、ぱり 粉々に砕けてしまった
ああ、わたしは確かにきれいだったけど
あまりにちいさく脆すぎたのだ
手折られ擦り切れ千切られて
今じゃセピアのわら半紙
いつからだろうか
真珠の首飾りが似合うようになったのは
薄爪に化粧を施す桜貝
自由詩
さくらがい
Copyright
常磐瀬良
2015-05-02 00:22:17