みさき さかい
木立 悟






既に夜だというのに
空の明るさは
人の灯りを
消し去るほどにまばゆい


窓を閉める
潮のにおい
窓を閉めない
暗がりの
うすい手のひら


山を削る白い径
螺旋が照らす白い水
幽霊のように空に立ち
何も無い谷間を踏みしめる


夜をはじき
夜に在る花
水辺を曲がり
野に落ちる霧
流れるものらに
加わってゆく


錆びた鴉が径をゆく
森の白に染まり
飛べなくなり
鉄塔の群れを聴いている


羽でも糸でもある指が
消えゆく花に触れている
隙間のない産毛が
そよいでいる


突き出たものにわだかまり
削りとろうとする螺旋と渦
音は常に光に呑まれ
水辺は静かなちからに満ちる


山の陰から
山より巨きな新月がのぞき
片目を隠すためだけに
すべての夜が滑りつづけ
径にたたずむものらを照らす


























自由詩 みさき さかい Copyright 木立 悟 2015-05-01 01:59:24
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