ラブコール
寿
あなたの名前が好きだ
あなたが生まれた朝
どれだけの人が喜んだかがわかる
あなたの生まれた世界で
どれだけ幸せでいてほしいかがわかる
あなたの思い出が好きだ
まだ陽が高い青空に急かされるように
お気に入りの場所までの坂道を走った
花の蜜さえ大人たちには秘密だった
自分だけの発見が誇らしかった
あなたの声が好きだ
深い深い、深海のブルー
光が届かなくても心地よく
光に近づくほどに優しい
少し冷めたコーヒーが似合う
そんな感じの声
あなたの手のひらが好きだ
温かく、柔らかな手
仕事をし、人をなでる
強く握ることのしんどさを知っているから
その手はいつも開かれている
あなたの言葉が好きだ
どんな人の後ろにもいちばん最初に愛があって
いつも振り返りながら歩けたひとと
ずっとそうできなかったひとがいて
その目の前にもし自分がいるなら
そのどちらでも良かったんだよって
ちゃんと言ってあげるって
あなたが好きだ
あなたの生きているこの世界がとても好きだ
あなたはここにはいないけれど
人や想いや物質や熱量
たくさんの瞬間に紛れ込んでいる
私が生かされているこの細胞は
きっとそのほとんどがあなたの意思だから
痛みのなかにもあなたがいてくれますように
幸福の連鎖がどうか起こりますように
私がなすべきこととともに生きていけますように
あなたが幸せでありますように