遠い空
葉leaf




遠い空の明け方の光のもと
純粋なデモが始まった
幾つもの国境と限界を越えた先のデモだけれど
空を渡ってこちらまでシュプレヒコールは届いてきた
純粋なデモの純粋な示威行動と純粋な主張には何も内容がなかった
ただ純粋な行為としてデモは内容を持ってはいけなかった

遠い空はいつまでも遠く
決して近くなることがなかった
遥かな理想や高邁な哲学が
遠い空にはいつまでも秘されていた
飛行機も船も何もかも遠い空には及ばなかった
遠い空は搦め手を待っていて
逆走を求めていた
正確なな正攻法は遠さを近さに変えることができない

僕たちはとりとめのない話をしながら
気持ちは遠い空を揺蕩っていた
親しい友人たちや恋人たちの気持ちが飛んでいく場所
それが遠い空である
僕たちはお互いの眼差しを感じているが
この眼差しは遠い空へと幾筋も伸びていき
いつまでも保存されるのだった

遠い空の夕焼けの光のもと
テロ組織が国家に戦争を仕掛けた
民間人は死に大国が武力介入し多くの血が夕陽のように流れた
遠い空は山を映すように戦争を映した
木々の芽吹きと人間の死とが遠い空で等しく絡まった
無差別で無批判に何もかも映し出してしまう遠い空
その限りない優しさ


自由詩 遠い空 Copyright 葉leaf 2015-04-28 07:07:24
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