投票が終わって
オイタル

投票が終わって家に帰った
家に帰って
冷めた朝の味噌汁に火をつけた
火のついたように連呼される
統一地方選挙の候補者の名がもう聞こえなくなったので
冷たくなった朝の味噌汁に火をつけた

家に帰る僕の引きずる足跡から
候補者の名が影のように滴り落ちていた

選挙カーみたいに自分の名前を呟いてみた
ぼくが見知らぬやつになって
ぼくはぼくを殴りつけたくなった
腹立ちまぎれに味噌汁に指を突っ込むと
味噌汁の底から候補者の名前が
豆腐と一緒に二つ三つ
浮かび上がった

投票を忘れて目を覚ました
家のドアを開けると
候補者が立って笑ってぼくを迎えた
ぼくも笑顔を返した
笑顔を返してドアを閉めた
ドアの向こうで風が
ぎしぎしと杉の花粉を飛ばしていた


自由詩 投票が終わって Copyright オイタル 2015-04-28 06:21:44
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