無垢な聖域で (四行連詩)
乱太郎


無垢な聖域で飛び回る小鳥
そして口のきけない少女が笑っている
パンドラの最後の希望は
この地で淡い松明に囲まれて飛び立つ瞬間を待つ


百年の孤独から目覚めた太陽が泉から怱怱と昇る
聖なる水が溢れて一面は水没しつつ浮上
少女の笑みがふと止んでその手には死んだ小鳥が瞳だけを
輝かせている、「飛び立つが良い」少女の初めての言葉


創世記のその遥か以前から空は無口だった
死者を迎える碧く広大な神殿の柱にはヒエログリフ
描かれている鳥の絵柄が小鳥に似て
大地に残された少女は再び声を失い眠りにつく


諦観を翼にパンドラは小鳥となって天上で歌っている
誰かが禁断の扉を開け放ったままに行ってしまった
小鳥もそこから落ち気がつけば永遠の煩悩を得てよみがえり
今は少女の傍らで歌っている/雌雄の無いままに



自由詩 無垢な聖域で (四行連詩) Copyright 乱太郎 2015-04-23 12:22:05
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