雨が降るようには
言葉は降ってこない
言葉は辺りを水浸しにしないし
視界を霞ませたりはしない

日が降るようには
言葉は降ってこない
言葉は全てを明らかにしないし
辺りを温めたりはしない

言葉には必ず先立つものがある
人の胃袋の辺りを押し続ける
明晰で冷酷な力がある
降ってくる言葉を降らせたのは
その人自身の抱える気圧の断層

雨が降るようにも
日が降るようにも
言葉は降ってこないけれど
人工的な落ち葉のように
計算にもとづく衛星の落下のように
人の技が暗に作用しながら
それでも出自は忘れ去られて
奇蹟のように言葉は降ってくる
それがすべての始まりであるかのように