お父さんが死んだ日。
梓ゆい

お父さんが死んだ日
いつもより輝いてみえた北斗七星。

お父さんが死んだ日
いつもより白く見えた庭の雪。

お父さんが死んだ日
いつもより寒く感じた六畳の客間。

寝ていたはずの猫は素足にまとわり付き
泥が付いたままの長靴の横でうずくまる。

放心状態の私は布団を敷き
真新しいシーツを丁寧に重ねた。

ストーブを付ける。
お茶を淹れる。
車の通り道の雪かきをする。
玄関を掃除して
靴下を履いて
テレビをつけたまま
帰りを待つ。

持ち主が居るはずの
携帯に電話をする。
黙って切る。
「おかえり。」といいたくて
玄関でうずくまる。

星だけが明るい夜空。
隣の家の明かりも見えない
半径一km以内の部落。

お父さんが死んだ日
いつもより綺麗にした玄関と広い廊下。

「フリースのマフラーからは、ほんの微かに匂いがした・・・・。」


自由詩 お父さんが死んだ日。 Copyright 梓ゆい 2015-04-18 07:49:08
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