マイナーなジャグラー
nemaru

毎朝
走る
山の
斜面に
ジャグラーが
放置されている

誰も取りにこない
通報もしない

北電子は丹精を込めて
開発し
書類を通し
保通協は試打し
検定を通り
ホールは
北電子から
買わされ
設定を辛くし
ユーザーは6をツモろうと
金をサンドに突っ込み
メダルを投入し
打ち
ペカり
ペカらず
勝ったり
負けたりし
総じて糞台だと評価し
完全に気持ちを掴み損ね
売り飛ばされ
中古店で
愛好者に買われたが
そんな人は次々と台を買うもので
部屋は
いつしか手狭となり
手元に置いておきたいランキングの最下位か
あるいは
手放したいランキングの第一位に位置づけられ
2chのスロット板でも
買い手
譲り手が見つからず
処理に困り
よなよな
レンタルの軽トラで運ばれ
まあこのへんでいいだろう

完全に
打ち捨てられたジャグラーが

ここにある

俺は
その機種名を
正確に
覚えようともせず
ただの
「マイナーなジャグラー」
と思うだけで
近づいて
起こしてやることもせず
毎朝
通りすぎ
たまに
起こしたら
毎日ここを通る人が
あれって
思うかもしれない
という
ちょっぴり
愉快な
気持ちすら
持ち合わせておらず
打って楽しくないものが
起こして楽しいはずもなく
手が
朝露に濡れるのも
いとわないほど
愛おしいものでもなく
それなら
軍手を持ってこようと
思うほどの
よすがもない

ただ
誰もいない
午後
木漏れ日や
日差しの角度によっては
少々
美しく感じることも
あるのかもしれないし
ざざぶりの
雨の日には
めちゃくちゃ
打ちひしがれているようにも
見えるのかもしれない

もう
彼の
GO!GO!ランプは光らず
ただ
喧騒を離れ
移ろいゆく景色の中で
小鳥のさえずりを聴きながら
優しい日差しを浴びながら
けばけばしい
ピンクのまま
俺が
ジョギングを
やめたあとも
(ここに)
残り
続けるのだろう


自由詩 マイナーなジャグラー Copyright nemaru 2015-04-16 21:31:46
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