いつまでも、どこまでも
opus
桜が咲いていて綺麗だ
白い猫が堀の中を歩いている
赤い橋の上で外国の方が
ブロンドの髪を揺らしている
携帯された五月雨が
水色のキュプラ素材のワンピースに忍び込み
クククッと笑っている
まつ毛が目に入って痛い
目をしばたいていると
白猫が私の膝の上に飛び乗って
「姉ちゃん、煮干しでも持って無いか?」
ポケットの中には
キシリトールガムしか無いから
変わりに首すじを撫でてやった
道端で親子が
楽器を引いている
母親がバイオリンを
息子がラッパを
童謡を奏でている
息子は白と水色のボーダーの
ニット帽を着け
そのてっぺんに桜の花びらを
のっけている
「あと少しで終わるよ」
猫がそう言う
「そうだと思う?」
猫は後ろ足を舐める
「さあね。」
強い風が吹いて
桜が宙に舞い
一枚が目の前で
ひらひら
ひらひら
それを猫が
ぴょーんと膝から飛んで
捕まえる
前足を膝に置き
花を私の手の甲の上に乗せる
「くれるの?」
「お礼さ。
それにそれは食えない」
猫はすたすたと行ってしまった
桜の花びらをコインケースにしまい
その場を離れることを決めた
空は青空で
白い雲がぷかりと浮いている
桜はあともう少し花びらを散らし、
次の葉を携える