ビバ、老眼!
夏美かをる
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ごく、
近視眼的思考で
詩のようなものを書いたなら
ちょっと離れて それを見つめる
軸がクニャクニャになっていないか
輪郭がグチャグチャになってはいないか
伝えたい思いがフニャフニャではないか
出来る限り頭を引いて 老眼の目で確かめる
軸を真っ直ぐに刺し直し 輪郭を滑らかに整えて
思いをしっかり固め 更にこねこね、ぺたぺたして
いわば小さな地球の形がやっとこさ出来上がったなら
思い切ってふ〜〜っと手のひらから宙へと飛ばしてみる
やがてそれは誰かの心にちゃっかり不時着するかもしれないし
別の誰かに弾き返されて孤独な漂流を始めるかもしれない
或いは 誰の心にも引っかからず、かすることさえなく
悠々自適の旅を呑気に続ける事になるかもしれない
それでも じたばた やきもき はらはらせずに
どんなエピローグでもしかと受け止める覚悟で
小さな地球の気ままで壮大なオデッセイを
老眼に蝕まれたこの目で追える限り追う
老眼的ピントがこりゃまたちょうど良い
半世紀生きて老眼になることにも
ちゃんと意味があるってもんだ
詩を書く者にとってはね!
ちっとも悪くないぞ、
老眼!
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