あなたの頬に
永乃ゆち




あなたがいなくなってから
なんど桜が咲いてなんど散ったでしょう

花びらはアスファルトに川面に誰かの頬に

あなたが好きと言ってた

日本の春は今も変わらず風を乗せて

花びらはアスファルトに川面に誰かの頬に

 

あの日の空はまだこの目に焼き付いて

あなたと交わした約束と疼く

 

僕は正しく笑えてますか

僕は正しく泣けてますか

僕は優しく騙せてますか

僕は優しく嫌えてますか

 

僕は誰かに好かれてますか

僕は誰かを愛せてますか

 

あの日の歌はまだこの胸に響いて

あなたが語った願いと揺れる

 

僕は潔く背負えてますか

僕は潔く下ろせてますか

僕は強く歩けていますか

僕は強く息できてますか

 

僕は誰かに伝わってますか

僕は誰かを受け止めてますか

 

あなたが教えてくれた

たくさんのくだらないことや

たくさんの夢やたくさんの嘘や

たくさんの愛を

僕は僕なりに感じて信じて

今を生きています

 

そしていつか

僕はあなたのことも

あの痛みも思い出さなくなり

毎日仲間と酒を飲みながら

心から笑うのでしょう

 

でもやっぱり

僕はあなたのことを

春が来れば思い出すのでしょう

桜並木を風に逆らい

心から泣くのでしょう

 

春の風に花びらは戸惑って

遠慮がちに降り注ぐ

 

それはまるであなたのように

アスファルトに川面に誰かの頬に

 

アスファルトに川面に

 

僕の頬に


自由詩 あなたの頬に Copyright 永乃ゆち 2015-04-11 03:36:44
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