空の底
草野大悟2

影が
はるかな青を見上げて
さくら色のため息をつくとき
アスファルトに貼りつけられたおれたちは
光となって舞いあがる。

ぽっと頬をそめた月が
なよなよ と
しだれかかってくるのは
樹の根元に
狂おしく眠っている
白骨たちが蠢きはじめる
こんな春の宵だ。

おまえたちよ
涙が欲しいか?
それとも怒りか?
おまらが求めるあらゆるものに
おれはなれる準備がある。

だが 
おまえらの
首を吊るあしたのためになど
涙をながしはしないし
まして
だれが太陽をさしだしてなんかやるもんか。

熱だ!
狂おしいばかりのネジの力だ!
鋏をふりかざす蟹の勇気だ!
おのれの屍を踏みこえていけ!
倒れるのもいい
泣くのもいい
愚痴だって
いっぱいこぼすがいい
空だって
大粒の涙や
人なんか吹き飛ばしてしまうような
ため息をつくじゃあないか。

風よ
空の底にすむおれたちにも
雲と手をつなぐ自由が
まだ 厳然と残されているのだ。


自由詩 空の底 Copyright 草野大悟2 2015-04-11 00:03:08
notebook Home 戻る