アラウンド
itukamitaniji

アラウンド

舞い散った桜の花びらは
行き交う人込みの足元に降り積もって
ぐちゃぐちゃに踏んづけられて
きっとその内忘れ去られるんだろう
いつかの四月に嘘をついた
大馬鹿者は無理だと笑われ続けて
今じゃ誰も覚えていないのに
平気な顔してまた同じことを言い続ける

ようやく果てにたどり着き
そこで死んでしまうつもりだった
冒険者は失望した
ある時ついに知ってしまったんだよ
この世界は真ん丸で
どこまで行っても果てなどないことを
この場所はいつだって
途中の風景にしか過ぎないことを

日々は進んでいるんじゃなくて
きっと巡っているものなんだろう
同じ風の匂いがした気がした
ここにあるのはあの日と同じ空気だろうか
時を越えて歩いてきたはずが
私はかつての私が放った言葉に出会った
そうやって何度もここに戻ってきては
同じ言葉に何度も出会うだろう

花散らしの雨が降り注いで
踏んづけられた桜の花びらは
細く頼りない川に流れて
またちゃんと新しい旅に出たんだ
私はその花びらの一片に
こっそりと小さな願い事を乗っけて
沈まずちゃんと最後の海まで
届きますようにと見送った


自由詩 アラウンド Copyright itukamitaniji 2015-04-04 13:12:24
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