ポエトリー・リーディング。
梓ゆい
客席の端に座り
マイクの前に立つ声を聞きながら
抱きしめられない寂しさでうつむいている。
「去年の今頃は、あなたのことを知らなかった・・・・。」
聞き馴れた音楽が流れ
その声が再び聞こえるとき
私の両目もまた
舞台の上で詩を読むあなたを
絶えず捕らえている。
(一言/一文字の持つ力は、時として破壊を招くほど恐ろしいと考えた事があるのだろうか?)
緊張で震える片足は
床に置いたグラスを蹴飛ばして
半分以上のモスコミュールを床にぶちまけた。
その水滴は
溜め込む涙にも似ながら木目に染みて
「あなたの紡ぐ言葉になりたい。あなたの愛する詩になりたい。」
と言うつぶやきさえもまた
ウーロン茶と一緒に
流れていった・・・・。