◎合図の朝
由木名緒美
遥か遠い地からやってきたという
鳥は上空に弧を描き
ここが大地の中心だと鳴く
指先に集約された生命は懺悔と熟慮を束ね
折り込めば人間の象を司る
坩堝のような欲のひしめく密書の中
思考のめくられる速度は風となり額を吹き抜ける
間違いだと聞かせてくれないか?
あまりにも自然な支配の無秩序に
無垢な魂は己の罪さえ微笑んで踏みしめる
地鳴りとなって揺らしてくれ
赤子の声さえ部品となるなら
私達はどうやって愛を説けばいい
幻のような鐘の音が
静かな夜に問い掛ける
理解り合えなくても
惹かれ合う眼が同じ岸辺を目指すならば
きっと透明な握手を交わすことが出来るだろう
絶望の先の夜明け
力ない瞳孔にかくも美しく照らされるものならば
足掻くことこそ唯一の調和となる
そっと膝をそばだてて
無知の地平が輪郭を露わにする朝の到来を待ち侘びて