縛るもの。
梓ゆい

「父が居なくなって、自由になった。」と言われたので

(縛るものが欲しい。)と

戒律を作った。

心に硬く
心に巻きつけて。

私は目隠しをしてから
自らの全身を巻きつけた。

「父が居なくなって、自由になった。」と言われたので

至る所を削ぎ落とし

家の一部になることを望んだ。

(長女だから・長女なので・長女として)

ー影でも支える、柱になろう。−

父と

残された家を思い

私は柱の一部になった。

(時折聞こえる、深夜の家鳴り。)

それは家へと帰ってくる父のただいま。

「私は、影でも柱になろう。」

父の残した家が

長く長くあり続けるように・・・・。

「私は、影でも柱になろう。」

父の残したこの家で

墓と遺影を見守るように・・・・。


自由詩 縛るもの。 Copyright 梓ゆい 2015-04-01 01:50:45
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