ふたつ ふたたび
木立 悟
どのくらい近く
どのくらい遠く
しあわせに触れていられるのか
目に落ちてくる
滴を見つめた
ふたつ ふたつ
ふたつのはざまの
無数の重なり
波のざわめき
療養所を跨ぐ青空
ひとつ向こうの空の雷鳴
灰の火の音
変わりつづける音
光が
滴や羽であることをやめ
そのままのかたちで近づいてくるとき
空は
失くなっている
壁に隠れた窓のまばたき
昇りつめるときも
堕ちつづけるときも
ただ曲がり角にだけ佇む影
宙を満たすかけらを見つめている
ふたたび空は現われて
冷たく短いしあわせに笑む
花はすぎる 水はすぎる
今朝みた夢が径の端に立ち
目に落ちる滴を呼んでいる