脈。
梓ゆい
大きな一呼吸
(ピーッ・ピーッ)と鳴る心拍数
閉じたままの瞳
左回りの一針が
小さな不安を呼び起こす。
(高い鼻・長いまつげ・尖ったあご)
顔立ちが美しいと
改めて思う。
すこし溶け出した雪
(ぴしゃっ・・・・。ぴしゃっ・・・・。)と
はねる泥。
(早く!早く!!)と
手を握る為にやってきた・・・・。
誰かと繋がっていないと壊れそうな私は
知っている番号に電話をかけ
逐一誰かにメールを送る。
左へと進む針が
「もうすぐだ・・・・。」と言っている様で
腕時計を鞄に入れた。
(時計は、悪魔の持ち物。)
せかすように動く度
脈拍数が平行線に近くなる。
手を握り/足を揉み/血の巡りを保とうと
両手は絶えず身体に触れた。
「朝が来て、声をかけるのを待っているから・・・・。
その目が開いて、私を見るときを待っているから・・・・。」
一定の機械音
曇りの無い酸素マスク
左回りの一針が
大きな不安を呼び起こす。