フルーツサンド
ユッカ

甘いものを食べていると、かなしかったことを忘れてしまう。こうやって何もかもを後回しにしているのはいけないことだ。甘いものを食べたら口をすすがなくてはいけないように、かなしいことがあったらきもちの片づけをしなくてはいけない。もうじき食べ終わるイチゴもキウイもリンゴも、早くすすいで、汚れた食器と向き合わなくては。それでも甘いものばかり食べつづけるわたしは、今こうして吐き気の前につまみだされている。季節外れのバナナとオレンジ、パイナップル。いつかのキスや手紙が甘すぎて、生活に追いつけない。日の出が風が花の芽吹きが速すぎて遠い。遠ざかる日々。手をのばさないわたし。かなしむことすら、あきらめてしまったのだろうか。きみもわたしも、傷つくことをやり忘れたまま、笑うふりをしているのではないか。そんな予感がいつも胸の底にひしめいている。それだから優しさすら苦いんだ。


自由詩 フルーツサンド Copyright ユッカ 2015-03-29 20:28:13
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