新鮮たばこ
春日線香

雉鳩が鳴いている
塀の向こうを首が歩いていく
頭の中では鶴がうまく折れず
車輪がふらつく

「ぼくらの世界はたんに神の不機嫌、
 おもしろくない一日、
 といったものに過ぎないのだ」

角の商店の
青い庇に白く染め抜かれた
 新鮮たばこ在庫豊富
の文字が目にとまる
伸びた道は程なくして
橋となり
並行の岸と岸をつなぐ
静かに
水位が下がっていく

やかんの蓋
こわれた傘
かに
かにの家族

渡りきってしまうと
郵便局前の
レンタルショップに入り
延滞金の千円を支払う
延滞金だから
ポイントは溜まらない
のだかどうだか

マスクをした人に
にこやかに見送られて
来た道を戻る
鶴はもう川に流す
目の端に
新鮮たばこが
白く染め抜かれている
それがわかる


自由詩 新鮮たばこ Copyright 春日線香 2015-03-28 22:58:10
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