チョコチップクッキーは大切なお友達に
とよよん

明日は、お誕生日。かんなちゃんのだよ。

かんなちゃん、大好きだから、
私の大好きなチョコチップクッキー、あげたいの。
とびきりおいしいのじゃないとだめだよ。

チョコチップと小麦粉。分量はばっちり。
バター、そして卵。
こっそり、そうっと、冷蔵庫より取り出して、

ハミング。

青いギンガムチェックの布をかけたバスケットにしまい、
ミカは丘へと出かけました。

みみず おはよう
こんにちは てんとうむし
ひらひらちょうちょ ごきげんよう

虹が丘で、

スキップ。

おおいぬのふぐりの青い花を踏み散らしていたら、
足下にころころと転がりくるもの。

「ミカ、花の上ですよ。」

脳に直接、語ってくる者。

「ちいちゃん、あのね。クッキーつくろ。」

ころころ転がる小さな鞠のような物体の後ろに
ミカはぴったりついて行く。

林に入り、すぐのところ。
こどもがハイハイでやっと通り過ぎられるくらいの穴が
太い木の幹に開いているの、知ってる?

つむじ風。

かけぬけた。

大型火炎放射器、地獄蒸し器、
対流型洗浄マシーン、各種容器
(飾っておきたいくらい、かわいいのよ。)

キッチン(?)

オーブンがあります。

その部屋には、

オーブンがある!

小麦粉と、あれれ?バッタ?
ぴょんと逃がして
バスケットからバター。

ひびが入ってる!すぐ使うからセーフ
の卵。

ミカのクッキーには欠かせない、
いつものチョコチップ。

それと?
クッキーを作るのに必要な材料なあに?

……………

うふ

そうね

くすぐったいなあ

……………

真ん丸で小さなちいちゃんは、
部屋の隅にある大きなくまさんの
鼻にとまりました。

するとくまさんが、動き出しました。

ミカが小さかった頃のお気に入りで
いつも一緒に眠っていた あの
ぬいぐるみのくまさんですよ。

「ちいちゃん、お願い。あのおいしいのお願いよ。」

奥から大事そうに抱えられ、運ばれてきましたものは。

銀色の缶

かん カン かーん

中身はなあに?

ふたを開けると
虹色に輝く粉。

ミカはそれをすくってバターの中に入れ
混ぜ始めました。

きらきら 輝く 虹色

バターに 混ざって 虹クリーム

ミカは手際よく、加えていきます。
卵の黄身を少しずつ。
ねり、ねり、ねり。

小麦粉 ふぁさっと
さっくりまぜたら、チョコチップ。

小さくちぎって、
くるくる丸めて。

(ちいちゃんみたい。)

そして火炎放射器を持ち出すくまさんに
首を振り
オーブン皿に丸めた生地をのせ、
上から軽く押す。

オーブンに入れて。
くまさんがあたたかくしておいてくれたよ。

……………

いい匂いが漂うまで
くまさんとオセロ
くまさんとお喋り
くまさんとダンス

……………

ああ、いい香り。

あの有名なけものの色と同じだよ、
取り出したクッキーは。

まだ湯気がでているクッキーを
バスケットにしまっていると

くまさんの様子がおかしい

部屋の角の いちばん くらくて じめっとしたあたりに
しゃがんでいます。
もちろん顔は
角の方に向けて。

「ちいちゃん、おいしい紅茶ある?
 私はアップルティーがいいな。」

くまさんは振り向いて。

(ちょっとおめめがうるんでいたかもな。)

とれました、
鼻が。

ミカに向かって飛んできて当たりました。

「イテテっ」

いい匂いの青いギンガムチェックのバスケット
紅茶の入った赤いギンガムチェックの水筒

組み合わせに満足しながらミカは、
木の穴からはい出ました。
クッキーがこぼれないように、
バスケットにとても注意しました。

おおいぬのふぐりのじゅうたんの
虹が丘
ミカは小さな丸い物体と
ティータイム。

もちろんお茶菓子は、さっきのチョコチップクッキーだよ。

「ちいちゃん、このクッキーは、
 明日、かんなちゃんにあげるけれど、
 ちいちゃんと私は、今日、それも一緒に、
 食べているんだよ。」

ミカが春風と一緒にハミングすると、
ちいちゃんはきらきらと笑いました。


(メビウスリング勉強会「10歳以下の子どもむけの詩小説」2015.3.20 初出のものを一部改稿)


自由詩 チョコチップクッキーは大切なお友達に Copyright とよよん 2015-03-26 14:26:57
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