消毒の時間
そらの珊瑚

にぶい金色の肌が
冬の陽だまりを
そっとはねかえしている
アルミニウムの
浅い洗面器のうしろに
整列している
こどもたちの
頬はあかく

順番になれば
みないちように
そこへ温かな手のひらを浸す
つめてぇ! 
うおぉっ! とか
言い合って笑う
透明な水に溶けた
クレゾールの匂いは
特別な儀式に添えられた付録
一日のうちのたった三秒の

足踏みオルガン
白墨チョークの粉の舞う窓辺
壁に貼られた水彩画の裾は
気ままにめくれつつ
ロッカーの上には
長すぎる鼻を持て余している
油粘土の象
長い廊下を渡り
ぬるくなった給食が配膳されてゆく
半分に切られた
バナナの斜めの断面が
すでに変色していても
まるでよその国のできごとみたいに
誰も気づかないふりをしていた

濡れた手指は
そのうち乾いて
しもやけのむず痒さが
ちくちくと
おしよせてきて
血が出るまでかきむしったら
どんなにせいせいするだろうと
夢見ていた


自由詩 消毒の時間 Copyright そらの珊瑚 2015-03-26 09:05:02
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