抒情としてのソラチネ
由木名緒美
欲を言えば
あなたの顔を奪ってしまいたい
イコンのように象徴的に
星空の元 飽くなき眼で見ていたい
不遇の理想の線上で
私の指は鍵盤を叩くけど
どうしてもあの旋律が紡ぎ出せない
もう消えてしまうというのに
皮膚の温もりはまどろみの官能をさまよい続ける
あなたの答える一つ一つが
かけがえのない驚嘆そのもの
まるで古典のように
古の命題を蘇らせる
このささやかな推測にすべてを捧げたい
葬られる理想を糧にして
体内を巡る不純物さえ傷口を鮮明に装飾させる
その口は真実を語るために
その目は運命を冒すためにあるのだとしても
ためらいは必然の雑音となる
すべてが明けてしまうこの夜には
口実など正真の証明でしかないから
あらゆる免罪符を破り捨てて荷おう
歌声の欲するままに
言葉は祈りの洗礼を受けて
今まさに二人の口から
響きだそうとしている