抒情としてのソラチネ
由木名緒美

欲を言えば
あなたの顔を奪ってしまいたい
イコンのように象徴的に
星空の元 飽くなきまなこで見ていたい

不遇の理想の線上で
私の指は鍵盤を叩くけど
どうしてもあの旋律が紡ぎ出せない
もう消えてしまうというのに
皮膚の温もりはまどろみの官能をさまよい続ける

あなたの答える一つ一つが
かけがえのない驚嘆そのもの
まるで古典のように
いにしえの命題を蘇らせる

このささやかな推測にすべてを捧げたい
葬られる理想を糧にして
体内を巡る不純物さえ傷口を鮮明に装飾させる

その口は真実を語るために
その目は運命を冒すためにあるのだとしても
ためらいは必然の雑音となる

すべてが明けてしまうこの夜には
口実など正真の証明でしかないから
あらゆる免罪符を破り捨てて荷おう

歌声の欲するままに
言葉は祈りの洗礼を受けて
今まさに二人の口から
響きだそうとしている


自由詩 抒情としてのソラチネ Copyright 由木名緒美 2015-03-26 01:07:49
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