FLY HIGH
ヒヤシンス


半端な陸にこべりついたエゴを
深海からしか償うことの出来ない
生温い血の風
魂を忘れた翼
深淵から破壊し続けるいつの世も

眼球は破裂 きっと
いいさ どうせとっくに硝子玉だった
見せかけていた 見えているふりをして
内臓も破裂 玉虫色に飛び散って
だけど無くならない 光が微笑んでいるんだ

もう焼きつく絶望しかいらない
どうせ希望を持つなら
天に届くまで FLY HIGH
何者にも縛られず
青空に融けていけ FLY HIGH

あるはずのない自らが築き上げた壁に囲まれる日々
深海から光の射す方へ目を向ける
ゆっくりと湧きあがる衝動 突き上げる高揚
天へと続く魂の道
自由さえ選ぶことの出来る大望

カーテンを開けるとすずめが一羽ベランダに落ちていた
茶柱が立った熱い湯呑に口をつけながら
瞳は湛えていなければならなかった
夢のお告げのような「自由」が古傷に鼓動を与える
孤独で顔を洗え 仕掛ける前の儀式のように

出港する日の朝
私は君に長い手紙を書いていた
それはとても私的なもの
それ以上の事は言えない
なぜなら翔ぶための前触れだから

机上を飛び交う便箋の数々は
尊い人達の囁きだった
いまや彼らはこの部屋を飛び出して
山へ海へと旅立っていった
里に残った私は独り厳かに旅支度を始める

凪が見ている この刹那を重ねた階段を
太陽が溶ける鼓動と大地を揺るがす足音と
風がヒトシズク タイムリミットと雄飛の幅を
知らせる
耳を置いて足を揃える

足を揃えたその時から
飛翔ははじまる
時は待ってくれない
いざや翔べ
星雲の向こう側まで

煌く星々の大海を泳ぐ
一際の輝きは真っ赤な星
人々の腕は虚しく伸びるが
決して諦めの気持ちは無い
それは清流に屹立する葦のように潔い

キラキラー煌めきを見極め 二つの三つ目見つめ
サン燦セブン 幸を運ぶ小舟の強かさ嵩を増す
スカイハイへの頂き下り頂きへの
一つだけではなく 過去から重ねられた
実りある玄 道

幾つもの門を通り抜け私は私になった
鳥には鳥の道 魚には魚の道
星には星の道 螺旋の軌道を往く旅人よ
波打つ草原から見上げる少女の瞳の奥へ
いま流れ星として生まれ落ちる

際立つ木漏れ日の道
寄せては返す波のような感情
深海から響くスライドギターの音色
海面をすり抜け空高く舞い上がる
激情 熱情 今こそ放たれる時

何の為の羽根ヒトシズク 道標に指してきたか
君の為の君 皆の為の君 大自然と想像大 景色の伝達
フライハイ 命と心臓と魂のカラットが銀河の瞳まで貫ける
フライハイ 額の感情を美しさに太陽が翻る瞬きの飛沫
フライハイ フライハイ

太陽の欠片を地上に届けて燃え尽きた
ヒバリの物語を思い出していた
最後の夏 予選でバーを落してから
飛ぶことを止めていた わたしを 風がいま包む
魂が助走を始めた とても静かな序奏

疾走感がどんなものであったか
疾走感がどんなものであったかわかるか
私達は確かに翔んだ
想像力は限界を超え
遥か宇宙へと飛翔する

エピローグという名前の
瞬く星よりも彼方へと
遠く広がる夜空に
世界にたったひとつの銀河に出逢う
天体観測はいつかの約束になる


2015/3/25 「黎明」同人第一号連詩


自由詩 FLY HIGH Copyright ヒヤシンス 2015-03-25 17:01:02
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