瓶の行き先
由木名緒美
夜の瓶の底を叩いて
がんらんどうの静けさだ
木々は枝分かれした懐に鳥達をいだき
近づく黎明を覆い隠すように
小さな寝息を慰撫している
今日という日に、起こるべくして起きたとして
その内のどれ程が本当に必要なことだったのだろう
確信と疑念の間で右往左往して
道端で古い記憶を見つけ出す
もう更新済みのそのものに価値はなく
胸に押し抱いても、うぶなノスタルジーは
あまりに幼い
川岸には無数の別れの白旗がなびき
聖者の行進は倦むことなく歩き続ける
見定めるのは好奇心か 使命感か
解の無い血は人々を慄かせ また清める
白と黒に分けてはいけないとあなたは言うだろう
たとえどれ程憎み合っていても
雲のようになれたなら
ただ溶け合い 混じり
雨となって共振できるのに
*
昼と夜が交互に結ばれ
夢は朝の目覚めを振り切り
太陽の陰にひそむ
昼の瓶の底が開けば
喧騒と埃の道を引き返す
「私達」はあまりに遠すぎる
それでも繋がるものがあるとしたら
夢の中で確認しよう
私達の故郷がどこであるか
そして真逆の明日の道を辿るどこで再び出逢えるか
細胞はますます複雑化し
命は口ごたえする中で