瓶の行き先
由木名緒美

夜の瓶の底を叩いて
がんらんどうの静けさだ
木々は枝分かれした懐に鳥達をいだき
近づく黎明を覆い隠すように
小さな寝息を慰撫している

今日という日に、起こるべくして起きたとして
その内のどれ程が本当に必要なことだったのだろう
確信と疑念の間で右往左往して
道端で古い記憶を見つけ出す
もう更新済みのそのものに価値はなく
胸に押し抱いても、うぶなノスタルジーは
あまりに幼い

川岸には無数の別れの白旗がなびき
聖者の行進は倦むことなく歩き続ける
見定めるのは好奇心か 使命感か
解の無い血は人々を慄かせ また清める
白と黒に分けてはいけないとあなたは言うだろう
たとえどれ程憎み合っていても

雲のようになれたなら
ただ溶け合い 混じり
雨となって共振できるのに



昼と夜が交互に結ばれ
夢は朝の目覚めを振り切り
太陽の陰にひそむ

昼の瓶の底が開けば
喧騒と埃の道を引き返す
「私達」はあまりに遠すぎる
それでも繋がるものがあるとしたら
夢の中で確認しよう
私達の故郷ふるさとがどこであるか
そして真逆の明日の道を辿るどこで再び出逢えるか
細胞はますます複雑化し
命は口ごたえする中で


自由詩 瓶の行き先 Copyright 由木名緒美 2015-03-24 06:09:19
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