ほんとのはなし
Seia

朝おきたら
すべて
なかったことになってますようにって
いのりながら
ねむるんです
なかったことになんか
なったことないんですけど

書き置きにしては長いメモ
一度くしゃくしゃにして
また広げたあと
テーブルのうえに置かれていて
これ
わたしが書いたの
指差し確認
おーけーおーけー
二度目のくしゃくしゃ
ポケットに入れて
鍵をしめる

梅の花が綺麗で
もう
半分散っちゃってるんだけど
隣にあるベンチは
すこし
汚れていて
あんまり座りたくないんだけど
しょうがないか
ポケットに手を入れたら
さっき買ったカフェオレがぬるくなってる

これは架空の話なんだけど
わたし
この星の生き物じゃないんです
って
梅の木に話しかける
傍から見たら、あ、
あんまりみないでください

すーっと
すべりこむように
足元へ影
光は喉元へ
太陽の動きが早くて
液晶みづらくなってる
これじゃ
あなたのツイート
追えないじゃないですか
いえ、こっちのはなしです
雲が多いのか
少ないのか

仕方がないからかえろうか
くらくてこわい
部屋へかえろうか
画面がみやすい
部屋へ
でもちょっとそのまえに
写メだけ撮っておこうか
写メってもう言わないっけ
言うっけ
どっちだっけ
写メのメってメールのメ
だよね
だっけか
メールしなくても写メってパシャ
パシャ

そういえば
これは架空の話なんだけど
わたし
この街の人間じゃないんです
って
梅の木にまた話しかける
傍から見たら、あ、
こ、
これはほんとのはなしです
だから
きいてください
ほんとのはなしに
うそをひとふりしたら
おいしくなるから
ほんとだよ
ほんとだってば


自由詩 ほんとのはなし Copyright Seia 2015-03-23 00:38:15
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