えりくさちえい

暗い河原に言い交わす

初めて触る画材なら、多少質を落としても色数をそろえた方がよい。祐子さんはそう言う。
その康子も夏が来ればおとなしくなった。

日本語に不明
描かなければ
不明

字面からことわざを作ってみたい。
鳥も手を焼く。
人間に倒される。
棒にも手がある。
鳥も手をなんとやらというし、時期が来たら私も人間に倒されたい。棒にも手がある。

夜景の見えるレストラン。
「君を一生愛し続けるよ」
男は指輪を差し出し、
「結婚しよう」
一世一代のプロポーズ。ところが、女の返事は芳しくない。
「一生だなんて嘘っぱちよ!」
がらっぱちに言い放つ。
男はやけっぱちになった。いきなり女に抱きついて、
「嘘なもんか」
でこっぱちにキスをする。途端に女はしおらしくなり、
「ありがとう。私、お受けします」
店内に拍手が沸き起こる。パチっぱち、パチっぱち。っぱちドラマ、完。

小さな中州に立って

ひとときの中州に立っている。

知り合いの宇宙人留学生の話。三年目になるが、地球の空気に慣れたと思ったのはごく最近のことらしい。
彼、初めて地球に降り立ったとき、なんか臭いなと思ったんだそうな(笑)

三人称視点で私が静止する。
物語はここで終わる、と私の声がナレーションする。
心の右下に終わりの文字が浮かぶ。

振り返ってみれば、私は実によい出会いに恵まれてきたし、出会い系妖術師だった。私はその気になれば、出会い系妖術の力で友達や恋人を好きに作ることもできた。けれども、しなかった。しなくても、いや、しなかったからこそ今の幸せがあるのだと思う。私はこれまでにただの一度も出会い系妖術を使わずにいる。


自由詩Copyright えりくさちえい 2015-03-22 19:46:08
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