人間>社会
吉岡ペペロ

4階部分まで破壊された5階建ての団地が放置されている

コンクリートの仕切りは家々の跡だ

道の駅は廃墟でよこに松の倒木がいくつも転がっている

それでも残骸はもうほとんどなかった

山から海のあるほうにむかって白いベルトコンベアがつづら折りになって降りていた

海抜をかさ上げするために土砂を運んでいるのだ

土砂の丘が整然と海を目隠ししている

だから海が見えなかった

見渡すかぎりが立入禁止だった

防潮堤を二段構えにし防潮堤と防潮堤のあいだを松原にする計画らしい

二段目の防潮堤のうしろを土砂で高台にしてそこを居住区にするそうだ

放射性物質でゴーストタウンになっていたあの村よりここには社会がある

津波より放射性物質のほうが

破壊より放射性物質のほうが

はるかに社会をなきものにするのだ

人間<社会ではない

社会は人間がいなければ存在できない

人間>社会なのだ

こんなあたりまえのことを体験しなければわからないぐらい

馬鹿で愚鈍で頭でっかちな自分を後悔で省みていた







自由詩 人間>社会 Copyright 吉岡ペペロ 2015-03-20 00:34:28
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