原風景
nonya




妄想と暴走の果てにある
方眼紙の平野には
フタコブラクダの形をした山が
文鎮がわりに置いてあった

緑の色鉛筆で
マス目を乱暴に塗り潰すと
山を駆け下りてきた風が
それを青田の漣に変えていった

青の色鉛筆で
マス目に沿って用水路を描くと
力を入れ過ぎて折れた芯が
幼い僕のように転げ回った

白の色鉛筆で
母親の似顔絵を何度もなぞったのは
もちろん祖母には内緒だった
Y軸をマイナス方向に伸ばした先に
母親の方眼紙はあると聞いた

橙の色鉛筆で
余白に悪戯書きをしていたら
鬼ごっこはいつの間にか終わっていた
コンパスで円を描くように
逃げ回る君を僕はまだ追いかけていた

赤の色鉛筆で
微かな傷跡を辿っているうちに
方眼紙の端から転がり落ちた僕は
まだ鬼のまま今日を彷徨っている

黒の色鉛筆で
ひとつずつ夢をぼかしながら
自分の物心が生まれた方眼紙に
しきりと帰りたがっている




自由詩 原風景 Copyright nonya 2015-03-18 21:58:24
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