平和連詩〜黒木アン*とよよん*天野行雄
黒木アン
*…黒木アン
春花は
いっぺあっけんじょな
おらの居る
会津山あいでは
やっぱカタッパだべ
カタクリのごどな
長い冬おわり
陽の雑木林のどごに
雪融け顔だし
福寿草
アメフリバナと
仲良ぐ
咲いで居んのな
おら家に
桜咲いて九本
畑に三本
並木咲いで
したげんじょ
なんてったって
やっぱ
カタッパだべな
カタッパが
すきだよな
平和でねえと
みれねえもの
さ、水筒持って
行ってみんべ
*…とよよん
陽だまりに踊る春のニンフ
やがて消え 次の春を待つ
限りなく透明なグレーのなかで眠っている故郷に
本当の春は いつ訪れるのか
水筒には
祖父が持ち帰った異国の水が
いつだってほんの少し入っています
あちこち陥没して傷だらけの鈍く光る水筒
濁り水で命からがら 家族のもとへの帰還を果たした
祖父の名残り水
路傍の花にそっとふりかけて
春を待つ