待ちわびて。
梓ゆい

雪が残る夜の庭先。
これから・・・・
帰宅する父を待っている。

妹二人に連れられて
「ただいま。」を言わないで帰ってくる父を・・・・。

(父が眠りに付き、大きく息を吸った瞬間を覚えては居ない。)

手を繋いで
一緒に行きたいのだけれども
父は「ダメだ!!」ときつく叱るから

庭先で「行ってらっしゃい。」と
見送ろう・・・・。

(長い期間の転勤で、遠い遠い所に行ったんだ。と思うように。)

「お父ちゃん・お父ちゃん。気いつけて。お父ちゃん・お父ちゃん。さようなら。」

一人で泣いている姿は
旅立つ直前の父に見えているのだろうか?

「あづさ・・・・あづさ・・・・頑張れよ。お父さんが、付いてるぞ。」

寒さの中に身を置いて
私はいつまでも父を待つ。

無言で帰宅する父を乗せた
一台の霊柩車を。







自由詩 待ちわびて。 Copyright 梓ゆい 2015-03-15 19:55:08
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