父の祈り
服部 剛
テレビの台に、よじ登り
画面の前で「おかあさんといっしょ」を
見ていた3才の周が
ぴょ―――ん
次の瞬間、ケガの防止に備え
台の下にずらしておいた、ソファが
後ろに飛んだちっこい体を、受け止めていた。
――恐いなぁ…
――危ないわ…
顔を見合わせため息をつく、僕と妻。
*
気分転換に妻は周と、友に会いに行き
途中で車を降りた僕は、お気に入りのCafeで
珈琲を啜りつつ…病の子を守りきれぬ
自分の無力を嘆き
ひと時――両手を組んでいた。
(目には見えない姿の神よ…
もしもあなたがいるならば
苦い珈琲を飲み終えた
空の器に
あなたの知恵を注いで下さい)
*
再び瞳を開いた、僕は
ふつふつ…沸騰する、熱の手を
鞄に突っ込み、取り出した
ノートを机上に広げ
ペンを持ち
まっさらな紙の余白に
物語の続きを――綴り始めた