父の祈り   
服部 剛

テレビの台に、よじ登り
画面の前で「おかあさんといっしょ」を
見ていた3才の周が

  ぴょ―――ん

次の瞬間、ケガの防止に備え
台の下にずらしておいた、ソファが
後ろに飛んだちっこい体を、受け止めていた。

――恐いなぁ…
――危ないわ…

顔を見合わせため息をつく、僕と妻。

   *

気分転換に妻は周と、友に会いに行き
途中で車を降りた僕は、お気に入りのCafeで
珈琲を啜りつつ…病の子を守りきれぬ
自分の無力を嘆き
ひと時――両手を組んでいた。

(目には見えない姿の神よ…
 もしもあなたがいるならば
 苦い珈琲を飲み終えた
 空の器に
 あなたの知恵を注いで下さい)

   *

再び瞳を開いた、僕は
ふつふつ…沸騰する、熱の手を
鞄に突っ込み、取り出した
ノートを机上に広げ
ペンを持ち
まっさらな紙の余白に
物語の続きを――綴り始めた  







自由詩 父の祈り    Copyright 服部 剛 2015-03-13 22:55:36
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