ピアノの去った日に
イナエ
サラリーマンが命を担保に金を借り
建てた家々の集落
書割のような中流階級
文化を支えたピアノ
音の断片が集落の中を
誇らしげに 恥ずかしげに
歩いていたのは何時のころだったか
口を閉じたのは何時からだったか
大型テレビに邪魔にされ
縫いぐるみの席になり
部屋の隅で家族の様子を眺めていたピアノ
今朝 男ふたりに支えられ
近所への挨拶もなく ひっそりと出ていった
肩寄せ合って見送っていた縫いぐるみは
これから何処に座るのだろう
自由詩
ピアノの去った日に
Copyright
イナエ
2015-03-13 09:28:05
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