ふいるむ
馬野ミキ
四つん這いで夕陽へ走る
ずっとたどり着けないだろう
俺たちは理解している
なぜ青春は人生のほぼ前半部分に据えおかれているのか
そのあとの人生について俺たちはどうしたらいいのか
二足歩行でやがて壁にぶつかる
翌朝猿が高層ビルの谷間で芋を洗う
で、
塩水が目にしみたか玉ねぎかで痛いから誰かを殴り殺す
実際誰でもよかった
そういうニュースの顛末を昨今、
つまりは赤い糸を手繰り寄せてロンパリのダッチワイフと引き潮の海岸で対面してうなだれる
泣いているだろう君は
砂浜で誰もがめそめそしている
そして死ねない糞たちはやがて泣き止むだろう
蒸発するだろう空気中に涙は
よく野菜を分けてくれる気のいい黒人が吊るされているのをまぶしい朝の光のなかで俺たちは何度もみた