幼虫
……とある蛙

庭の片隅にある金柑の木
棘の生えた枝の先に
その日もイモムシがいる

太い緑色の胴に
胸には眼の黒丸
突っつくとオレンジの角が
にゅーっと
その日もイモムシがいる

イモムシはじっと動かない
じっと見ている幼い僕は
イモムシになり
にゅーっと
自分の顔が近づいてくる
僕はじっと動かない
その日も僕がいる

でも鼻先に香の強い
金柑の若葉が
とてもおいしそうな
金柑の若葉が繁っている
むしゃむしゃ食べている僕
食べている僕の鼻先に
幼い僕の顔が近づいてくる
その日も僕がいる

あげは蝶だ
幼い僕は気づき
金柑の枝をそっと折り
そのまま僕を掠め取る
金柑を守るためではない。
幼い僕は
欲しくなったのだ
食べたくなったのだ

あげはのイモムシは
じっと動かない
躊躇無く僕は食べた
ぱくりと食べた
途端に
苦くて臭い香が口中に広がった
ぐぇっとなって広がった
っぺっぺと僕は吐き出され
チョウにならずに食いちぎられた。
その日からイモムシはいない。
その日からイモムシはどこかへ
行ってしまった。


自由詩 幼虫 Copyright ……とある蛙 2015-03-11 10:59:42
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