悪魔
葉leaf




雨にも負けないデクノボウだった。欲もなく、慈悲に満ちて、多くの人を助けながら、名誉を望まなかった。高潔でもなければ人格者でもない。ただ純粋な心を持ち、朴訥に生きていた。そう、彼は悪魔だった。

全ての人間の罪を背負って代わりに死んでいった。多くの名言を残し、多くの奇蹟を行った。彼の言動は後世まで長く語り継がれ、神の子と呼ばれた。彼を描いた絵画は数知れず、彼を語った物語も数知れない。そう、彼は悪魔だった。

決して世の中を広く知っているわけではない。だが書物の森には深く分け入っていて、重要な哲学書はほとんど読みつくしている。そして彼は遠大な哲学を構築した。そして政治的には恒久平和を願った。そう、彼は悪魔だった。

田舎に生まれ、田舎の進学校で優等生として卒業し、一流大学に入った。学問を幅広く身につけ、実社会に還元していった。普通に家庭を築き、友人と共に語り合い、仕事にプライベートに充実した生活を送った。そう、彼は悪魔だった。


自由詩 悪魔 Copyright 葉leaf 2015-03-11 02:52:28
notebook Home 戻る