ドロップスーサイド
初谷むい
誰だってしらないまちだ 下腹のいたみがぼくを支配している
甘い雨 いつかしぬのはこわいよね 傘の中では雨は降らない
花曇いつかわすれる苦しさを愛することがせいしゅんなのね
昼過ぎのベッドの布に巻かれてる今日は雨だね、雨が、ふってる
ドロップの模様みたいなセーターで検索欄の『自殺 方法』
アリガトに返すことばがわからないどうでもいいしきみに会いたい
甘い飴噛み砕くときぼくの歯のきれいな凶器に囲まれたさま
性交の影絵であそぶ アイシテルアイシテイルヨゴメンごめんね
しねないね わかってるんだ明後日になればその日の飯がおいしい
死のうっていうのはきみの口癖で、きみはそう言うことに安心しているのだとおもう。あんしんってすごいよね、病院に行かなくても、その気持ちでいきていられる。
死ぬ。
この国では肉が腐る前にぼくらは骨になって、ちいさな壺に入る。
ぼくたちがそういうことに憧れるのはいわば青春の病気だ。しらないことが多いってわかっている時代の方が、いろんなことをこわくなるから。きみが手首に浅く傷をつけてみること、否定ができないくらい些細なこと、すきになれたらいいと思っている。ぼくだけしかしらないどうでもいいことを肯定したいよ。しにたいと言うこと。心中という言葉が好きなこと。不謹慎であればあるほど、リアルで無ければ無いほど楽しいこの時代に平凡なぼくたちは結局、死がどうしようもなく遠いことに甘んじていた。