坂本竜馬は滅べ
初谷むい





特別な格好なんてしないでよ嘘にちかづくいちにちにしよう。


かいしきの合図はきみの欠伸です。へいしきの合図にはいちーず


先生さ、わたしがすきってゆったこと学年便りに書くのやめてよ


くろはかま、しろいねくたい、まとめがみ、拍手、拍手、の、補完計画


二番の歌詞知らない歌をうたわされぼくらは元気に卒業します


いつ死ぬかわからなくてもきみがすき。どこに行ってもきみがすきだよ


蛍の光 泣きそうだなんてうそついちゃうきみの垂らすみつあみ





数学の先生が袴を着て卒業式にやってきて、いつももしゃ
もしゃの髪も後ろで束ねていて格好良かった。かっこいい
ですね、っていったら、日本人だからな、って返されて、
そういうことじゃないなっておもいながら笑っている。だ
いすきなおんなのこは今日もぼけーっとしていて、式の最
中たまに白目をむいていた。かわいい。きみが、とおくの
大学に落ちて、近くの大学に行ってくれること、じつはま
いにちお祈りしていてそんな自分に死ねって思っていたこ
と、たぶんぜったい、ずっとひみつなんだろうな。すうが
くの先生は彼女の担任。隣のクラスはいつもぼんやりとあ
たたかかった。空気。蒸気の熱。体温がたかいしゅうだん
。卒業アルバムにもらった先生のメッセージは、名前部分
が読めなかった。完成されたものがある。それが壊れる。
どこかにはまる。若さ、そういったものだよ。まじめなの
は見た目だけのきみがいつかそんなふうに言っていた。う
そでもよかったのに、どうやらそれは本当で、せんせいは
いつもよりすこし、年をとって笑っているように見えた。


短歌 坂本竜馬は滅べ Copyright 初谷むい 2015-03-07 12:44:01
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