誰も愛さないと決めた日
コトバスキー

誰も愛さないと決めた日
たくさんの人に配分される
予定だった気持ちは
不良債権となって
自己中の缶詰に詰め込まれ
開けられるのを待っている

虫の声しか聞こえない
真夜中の部屋で
僕は缶詰を開けようと
爪を立ててこすっているが
プルタブなどついている訳もなく
カンオープナーが台所にあるのを
すっかり忘れている慌てぶり

誰もが僕の行為に首を傾げる
僕でさえ理由はわからない
しばらくして缶開けに飽きたので
周りをぐるりと徘徊した後
再び缶開けに戻るのだけど

やっぱりカンオープナーは
台所の上から二番目の
引き出しにしまわれたままで
その使命に気づくそぶりもない

誰も愛さないと決めた日の
翌朝の太陽はとても眩しくて
思わず缶詰のことを忘れそうになる。

だけど、また今夜缶詰を開けようと
する自分が想像できる
そのジレンマに辟易として
僕は二度寝する


自由詩 誰も愛さないと決めた日 Copyright コトバスキー 2015-03-06 20:48:10
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