計器飛行
たま

見えなくなった
何もかも
熱帯雨のような景色のなかを
蚊が飛んでいる
飛蚊症なんだって

読めない
書けない
意識がまとまらない

網膜はく離の前兆とかもあるんだって
頭痛、嘔吐感、それはない
ただ、何もかも、見えなくなった
それが恐い

パソコンは一日三十分
あとは大きな活字を拾い読み
それで回復するものでもない
でも、
高橋眼科の助手はピチピチギャルばかり
あれは眼にいいね
なあんて、言ってる場合か

読めなくてごめんなさい
書けなくてごめんなさい

誰に言ってるの?
誰だろう?

こんなところで
視界を失うなんて
ぼくはまだ、着地したくない
いま、着地したら不時着じゃないか
そんなのいやだ
死んでもいやだ

残された望みは
計器飛行しかない
おう! かっこいいじゃん
詩人だね
うん。年金飛行とも、言うけどね

何でもいいから飛んでいたい
尾翼のない飛行機でもかまわない
プロットなんてもういらないし
テーマなんて捨ててしまえばいい
それでも飛べるはず

生きてゆく
精いっぱいの高度さえあれば










自由詩 計器飛行 Copyright たま 2015-03-05 14:38:17
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