ソメイヨシノ
迷亭うさぎ

ソメイヨシノは
夢想していた
練香を一筋塗った
乙女のように
満開に咲き乱れ
ほのかに満ちる初恋の香り
気まぐれな風に遊ばれて
さやさやと宙に翻ったとき
透き通った蝶のに似た
繊細なきらめきを見せた
やがては地面に散ってゆく
儚い命と
知っていながら

ソメイヨシノは
夢想していた
ビロードの湯は生温く
纏わり付いた柔肌に
撫子色を残していった
知らない味を舌に残して
降り注ぐ
朝日の光と恋に落ち
妖しい月夜はたおやかに
艶めく舞に身を任せた
やがては地面に散っていく
儚い命と
知っていながら


自由詩 ソメイヨシノ Copyright 迷亭うさぎ 2015-03-05 06:39:19
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