靴底
為平 澪

夕暮れチャイムの音を 靴底で踏む
冷めた指で掴みたかった夢は
温い毛布の中のちがう体温

斜めに闇を切り裂く車のライトに
いくつもの私の顔が 現れては消されていった

パンプスではもう歩けない距離まで
重い足を引きずりながら
自分の影を踏みしめて来た
両手には 夜食袋の重さが 
指にのしかかる

 (冬至までは冷え込みますから
 (お体に気をつけて

誰が言ったか分からない伝言のような言葉
思い出しながら 路地裏に入ると
夜をつれた 黒い冬が私を覆う

 (オトウサンガ ニュウインシタノ
 (シンパイシナイデ、ケンサニュウインダカラ・・・

足先から しんしんと捉えてくる
粘りつく冬の影
私が私でなくなる温度に 侵されてゆく

流れるライトに炙り出される 寒さの正体
動けるだけの力で 白い気配を 靴底で蹴りつける



自由詩 靴底 Copyright 為平 澪 2015-03-04 17:20:10
notebook Home