孤独なこころ
迷亭うさぎ
夏の夜には
哲学者がやってくる
重たく湿った空気を裂いて
纏わり付いた夏の残滓を背負いながら
のっそのっそとやってくる
窓の格子がぼんやりと
月の明かりで光っていた
乳母車を引く質量の響き
すべてが重たい現実で
私の心はどうしようもなく早鐘を打った
冬の夜には
聖職者がやってくる
冷たく乾いた空気をきって
足元を掬う木枯らしに足を早めて
さっくさっくとやってくる
薄い障子がカタカタと
音を立てて揺れていた
凍りついた世界の中で
私の心はふしだらなほど
熱を求めて彷徨った